優しい先輩と半分のケーキ

タイムラインを見て先輩の家まで行った。表札を確認して少しだけ後悔する。インターフォンを鳴らしてドアが開くまでの三十秒。ゆるゆるした服を着た先輩がぼさぼさの髪でどうしたと訊くので失恋したと読んだのでと正確に伝えるとあははと少しだけ本当に楽しそうな顔をして上がりなよと招かれる。玄関で靴を脱ぐ前に先輩の好きなケーキの入った箱を渡すとまた少し面白そうな顔をしてお前のそういう所が好きだよと抱き締められる。それこそケーキのような甘い匂がして香水だと気付く。先輩の部屋は女の子の手本のように白や淡い色で纏められていて私はお姫さまが眠るようなベッドに座らされた。狭くてごめんねと先輩が紅茶のペットボトルを二つ持ってきて床の上に座る。そうすると先輩を見下ろす形になって変な気分だ。私は早口で先輩を慰めたいことや何でもしたいことを伝えて現金も幾らか有ることを話す。先輩は今度は難しい顔をして黙り込む。そして怖いなと呟く。怖い。私は先輩を怖がらせているのだろうか。じっと目を覗くと貴方のことを心配していると真剣な顔で云い直してくれる。それから困った顔をしてケーキの箱を開けて私の分しか無いかあと苦笑する。先輩。先輩。貴方は特別な人です。私の全部を差し出しても良い。それなのにチョコレートケーキを二等分して片方のフォークを差し出す貴方は神様より美しいです。先輩は半分のケーキを食べ終えてから私の誤謬を一つずつ丁寧に挙げていって危ないからねと教えてくれた。私はそれを機械のように学習して何度も頷く。

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