すみれこさんは雨音で目が覚めた4月の日曜の昼前、植樹された木の傍で猫派か犬派で仲たがいする話をしてください。

さみしいなにかをかくための題(https://shindanmaker.com/595943)さんからお借りした言葉から生まれた物語。

父母の葬式の後に小鳥を貰った。淋しくないように絡繰にしたよと白衣の人は云う。四月。目覚めたばかりのような庭で貴方が私に永遠を問う。私は子供の頃に貰った小鳥を見せて永久機関だよと説明する。貴方は睨むように眺めて犬の方が可愛いと云う。何方かと云えば猫が好きな私は雨に濡れた木に触れる。

すみれこさんは明け方、地下のバーで不意にペリカンが立っているのを見たという話をしてください。

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貴方が笑ったかと思うとペリカンと云う。店主に変な薬でも入れたかと目で問うと顔を横に振られる。アルコールに弱いのだとバーに連れてきたことを少し後悔する。クリスマスをテーマにした店内は雪を被ったツリーや小さなオブジェが幾つも置かれていてとても可愛いのに。ふと手を握られて口付けられる。

すみれこさんは特別なことは何もない日、白く小さな花が咲く聖地の丘で合唱の練習に参加できなかったことの話をしてください。

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私達の学校は聖なる丘で合唱の練習するという変な伝統が有る。嫌よと貴方は私の手を引いて商店街まで連れて行く。そしてクレープを食べている。アーモンドと生クリームとキャラメルソースだけのシンプルな。一人でサボタージュすれば良いのにと抗議すると見世物にしたくなかったと優しい目をする。

すみれこさんは夏の停電の夜、節穴のある板塀の前で知らないレシピを聞いた話をしてください。

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少女のレシピは砂糖とスパイスと貴方が歌いながら手を引いてくれる。熱帯夜より暑い夜。停電で街灯が灯らない道にも慣れてしまった。これは家出だろうか。旅行だろうか。携帯電話には誰からの着信も無いから失踪かも知れない。ふと視線を感じて顔を向けると板塀に穴が開いている。目が合う。

こんな夢を見た

貴方は友人のように唐突に話し掛けてきた。漫画を私に貸したいらしい。三冊も。一冊は私も読んでいたものなので最新刊は無いのと訊くとこの巻が好きなのだと云う。ふうん。貴方は来た時と同じように突然に居なくなる。私にも貸してよと云う子に頷くと後ろの席の子があの子の名前を知っていると尋ねる。私は少し焦りながら思い出せなくてと云うと人の名前とは思えないほど長い名前を告げられる。辛うじて聞き取れた苗字は人間で名前が実験動物か神様の名前のようだった。名前を教えてくれた子は関係が何方かの破滅で終わることも教えてくれる。祟りのように扱われていると思いながら貴方のぼさぼさの髪や身に覚えの無い親密さを思い出す。せいぜい家庭環境に問題の有る子だろうと見当を付けると布団で目が覚めてすっかりと人間らしくなった貴方がもう行くよとオフィスカジュアルなる服を着ている。短く切られた髪もさらさらだ。貴方の夢を見たよと云うと難しい顔をした後に猫のように玄関に向かってしまう。二度寝するか迷う。

すみれこさんはいつだったか忘れた日、昔は人が住んでいた離島できみの耳の形についてあらためて気がついたことの話をしてください。

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君の耳に触れる。コンプレックスと手で隠される。故郷を見せてあげると君はこの離島に連れて来てくれた。廃屋がぽつぽつと有って不思議な形の樹木が生えている。君はテレビで標準語を覚えたと云う。君は夜の店で学費を稼いでいる。でも私達は友人でなく旅行になど一緒に行かないから夢かも知れない。

すみれこさんは斜めに日が差すゆうぐれ、建物の中にある庭で動物になってしまいたかった話をしてください。

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貴方の伸びた影を踏むと嫌ねと微笑まれる。夕方。中庭で私達は級友を待っている。手入れの行き届いた黒髪も膝まで隠すスカートも両親の躾の賜物だろうか。ということ口にすると貴方の顔が曇って背を向けられてしまう。焦って名前を呼ぶと貴方も私の猫のようねと声と背が笑っている。憎らしい。

すみれこさんは木香ばらの香りのする夜、庭のちいさな噴水の前で謝れなかったことについての話をしてください。

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薔薇の香りだと君が云う。私には分からないけれどそうだねと返す。噴水の前に立つ少年のような君に見惚れながら薔薇を探してみせる。誰も好きにならないでと思う。ふと君は手品のように詩集を持っていて私の胸に押し付ける。感想を聞かせてと云う君のブラウスとスカート。私はまた錯覚に気付く。

すみれこさんはスマートフォンの明かりだけが手がかりだった夜、古民家を改装して作られたチョコレートショップで知った、この世で一番美しい拒絶の方法の話をしてください。

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住宅街にぽつんと現れた洋菓子店に足を止める。恐る恐る扉を開けると貴方がこんばんはと声を掛けてくれる。一軒家を改装したらしい店の中にはフランスを思わせるチョコレートがずらりと並べられている。ねえ。探したよ。一緒に帰ろう。殆ど泣きそうな声で呼び掛けると貴方は微笑んで商品を説明する。

すみれこさんはけだるい5月の昼前、閉架式図書館で一度だけした悪いことの話をしてください。

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夢は解像度が高いよねと君が眼鏡を拭きながら云う。閉架書庫で本を探しながらうんうんと答える私に写真より鮮明な景色が見えると続ける。星が星を食べる小説はなかなか見付からない。視力を失くしたら夢だけ見ていたいなと云う君はレースの目隠しをしている。夢だと気付くと逆さで落下している。