深夜の喫茶店は存在するのだろうか。その夜に検索して地元の駅から一本で行けるこの店に足を運んだ。名前は云えない。覚えられなかった。外国の言葉で月の裏とかだったと思う。珈琲が高かった。甘いものが食べたくてパンケーキを頼んだら吃驚する厚みのものが出された。生クリームと苺が天辺に飾られている。甘い。美味しい。この多幸感は生地に染み込んだシロップのためだろうか。私はスマートフォンを取り出してメールを開く。この店のことと最近に見た映画のこと。返信はきっと来ないけれど。メールを送って改めて店内を見回すと深い紺色と古びた金色を基調にした店内は確かに夜が似合った。客は一人か二人で来ている人ばかりで海の底のような音楽が静かに流れている。私はこの店を貴方に知らせたかった。でもアドレスも番号も知らない。もう会うことも無い。ので安心して思い出すことができる。半分ほど食べてからパンケーキを撮っておけば良かったと気付く。本当は少し退屈している。ベッドに横たわりたいけれど始発は数時間は来ない。貴方の記憶を取り除いたら何も残らないことが私に本の頁を捲らせている。強迫的に。