十三月十二日。日記を書くように云われました。昔は誰もが紙に書いていたそうで贅沢な時代です。日記もまた小さな物語だと考えれば私はいま少しだけ作家です。書くことは現実を書き換えることでしょうか。そうだとしたら細やかな抵抗ですね。余りに細やかな。貴方の日記を読み終わりました。燃やされていなくて良かった。私達が例えば社会と呼ぶものに対して貴方の心は本当に無力で無防備で無価値でしたね。良く頑張ったと思います。本当に。生きていて偉かったです。生き延びてほしかったなんて思っては駄目でしょうね。紙に書かれた日記は脆くて頼りなくてそのことがとても悲しかった。今日は夢見が悪くて最悪の朝でした。顔を洗って鏡の私に中指を立ててみました。それから仕事をして夜に病院に行って日記を書くように云われました。貴方は余りに大事にされたから人形だったことを忘れてしまったのでしょう。私は貴方を壊したものを憎みます。憎悪します。でも私も貴方に同じことをしていたのかな。十三月ももう終わります。貴方が居なくて淋しい。それよりも強く深く何かを祈っています。