たかが百年を永遠と呼んで

魔法とは錯覚のことだよと貴方は教えてくれた。図書室で繰り返した筆談を私は神経質なほど覚えている。それだけが空虚な心に意味や価値の有ることだったから。白い制服が貴方に似合っていた。強く流れるように文字を書く指が何より確かだった。魔法とは錯覚のことなんだよ。貴方が自分を存在しないと思うことも世界は綺麗だと思うことも全て。そうして自分で自分に魔法を掛けなければ生きることもできないんだよ。固い文字を覚えていても声を思い出せない。整えられた爪を覚えていても顔を思い出せない。でもね。魔法は言葉で心で人の心は永遠でないから。貴方は私を美しくないと気付いて認めて本当はそれを美しいと思えた貴方こそ美しかったのだと分かるの。だから。名前を呼ばれて目を開ける。病院というものはどうして何処も彼処も白いのだろう。何百回も再生した記憶は何時も離別の言葉で終わる。貴方は何を恐れていたのだろうか。魔法は茨のように虚構の城に絡み付いて侵入者を許さない。人は永遠を生きないのにと今ならば云えることが悲しくて悔しい。診察室に入った私は白衣を着た先生をまた錯覚して少し笑う。

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