深淵と親しくする

貴方を鏡に喩える時に投影され易い人も居るのだろうかと思う。冬。私達はみな学校指定の外套を着込んで雪こそ降らないものの零度に近い外気に頬を赤くしていた。隣を歩く貴方の印象を言葉にしようとすると難しい。妹。子犬。楽器。どれも近いようで遠い。今年はね。雪が降るんだって。氷花って知っている。氷の花って書くんだけれど。貴方の話は飛躍が多くて即興曲を弾かされているような気持になる。まるで規律を知らない子供のように貴方は喋り続けるので空疎な語りは話したくないために話しているのでないかという疑惑に何時からか駆られる。そして貴方の話に相槌を打ち続ける私こそ何も話したくないのだと気付いてああと思うのだ。貴方はやはり鏡でないか。私は不可視の鏡面に貴方の横顔でも映っていないかと目を凝らして深淵を覗き込むとはこういうことかと思う。私は貴方の友人になりたい。

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