薔薇石英

貴方の欠点は死んでいないことだけよと真珠は私の名を確かめた後に告げた。会えない人と死んだ人は同じと云うけれど生きていれば会ってしまう可能性が有るもの。私は死んだ人が好き。でも私のために死ぬような人は愛せない。それだけ話してもう良いとも訊かないで見せた後ろ姿を私はやはり綺麗だと思った。現実なんて無視して観念の中で生きている人だとも思った。それを可愛いとも可哀相とも思った。

真珠。貴方こそ死んだら完璧な宝石として私でも愛せるのでないか。適当に選んだ画集をぼんやりと眺めながら云われたことを全て思い出す。何度も何度も。薔薇石英と先生が呼ぶのではあいと答える。学級委員は梅雨が過ぎてから少し忙しい。先生は離婚したばかりで小さな娘に会えないらしい。私は先生と二人の時に少しだけ無邪気に振る舞う。でも何かが欲しいわけでない。唯の慰安だ。

私が真珠に振られたという噂が何故か広まる。私は誰にもそのことを教えていなくて真珠にも恐らく話すような人が居ない。陰口を叩かれても真珠は綺麗だ。例えば硝子の中の積雪の絶対さで汚れたりしない。最近の私は貴方の名を簡単に呼べない。噂のためというより此処の生徒が神様の名を濫りに呼んだりしないように。私は恋愛と信仰の差を考える。そして改めて友愛という語を辞書で引いてみたりする。

死んだら良いのにと人前で零したことが有る。その子が余りに吃驚するので自分のことよと苦笑してしまった。私達はそれぞれ宝石の名を持つ。真珠は緑柱石という人と仲が良い。私は真珠という語も当然に調べていて生体鉱物という語を知った。私達はそれぞれ淋しい。

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