心の具合が悪いと貴方は布団に潜り込む。客人の前だぞと思いながらも膨らんだ布団の上から小さな体を撫でる。居間は寝室に変わってローテーブルに置かれたショートケーキは半分しか食べられていないものの苺は綺麗に失くなっている。私達は進学校に通いながら大学に進まなかった変人だ。食事に困ったことは無いけれど長く縺れた髪や度の合っていない眼鏡や些細な会話に困ることから学校には一度も馴染めなかった。級友の中には大人びた子も居て本を貸してくれたりした。本。私達が家の中で一度も出会わなかった別の世界。私達は図書室に居残るようになって本が好きなのに勉強はできない変人としてますます噂された。高校を卒業して貴方は四畳半よりは広い部屋を借りた。その方が親も喜ぶからと云う貴方の笑顔は完璧だったけれど月の沈まない砂漠のように淋しい。私は貴方が顔まで布団の中に隠れていることを良いことにケーキを手で摑んでそのまま食べる。どうしてか野蛮に振る舞う方が貴族的に感じる。この居心地の良い部屋を出たくないなと指を舌先で舐めながら貴方に見られていることを意識する。